11月6日(金)、ついにキングギドラのビジュアルが公開されました!
【ご注意】以下の記事には『ゴジラ −0.0』のネタバレが含まれます。
松本では、このビジュアルを使用した限定オリジナルクリアファイルなどのグッズも発売されました。

松本限定グッズの販売は来年5月末までとのことですが、すでに一部の商品は売り切れとなり、増産に入ったようです。
なかでも、このクリアファイルは本当に素晴らしい出来栄えです!
期間限定で終わらせるのはもったいないくらいで、いっそのこと松本城の売店の定番商品にしても良いのではないかと思います。
3年前の『ゴジラ −1.0』公開時に、シネマライツ8さんが企画された商品と並べてみると、あらためて感慨深いものがあります。

さて、今回のクリアファイルに描かれた松本城ですが、映画の舞台となった昭和24年(1949年)の姿だとすると、古写真ファンの私としては、ちょっとだけ「あれっ?」と感じたことがあります。
もちろん、『ゴジラ −0.0』はフィクションですから、すべてを史実に忠実に描く必要はありません。史実との違いを指摘して作品を批判したいわけではなく、古写真から見えてくる松本城の歴史を、ちょっとご紹介したいと思います。
実際、映画に登場する艦艇や航空機などにも史実を踏まえた脚色が加えられ、それが作品の魅力にもなっています。松本城についても、私たちが見慣れた美しい姿で登場させていただいたことは、とても嬉しく思っています。
では、映画の舞台となった昭和24年頃の松本城は、実際にはどのような姿だったのでしょうか?
こんな感じです!

これは昭和16年(1941年)発行の写真集に掲載された松本城です。映画の舞台となった年より8年前に発行された写真集です。
現在の松本城と、どこが違うかお分かりでしょうか?

実は、乾小天守(いぬいこてんしゅ)の意匠が、現在とは異なっているのです。
松本城では、明治36年(1903年)から大正2年(1913年)にかけて、いわゆる「明治の大修理」が行われました。
この工事では、傾いていた天守の修正や建物の補強などが行われましたが、その過程で外観にも一部変更が加えられました。
乾小天守もその一つで、窓の形状などが変更され、ガラス窓も設けられました。
建物内からの眺めは良くなったでしょうし、当時としては合理的な改修だったのでしょう。
しかし、現在の姿を見慣れた目には、少々違和感があります。
なお、明治の大修理以前の乾小天守は、基本的に現在と同じような意匠でした。
つまり、私たちが見慣れた松本城の姿は、明治の大修理によって一部が変更され、その後の「昭和の大修理」によって、かつての姿へと戻されたものなのです。

さて、ここからが、今回の映画とも少し関係するお話です。
映画の中では何度も言及されるGHQですが、実は松本城とも浅からぬ関係があります。
なんと、松本城が現在の美しい姿を取り戻すきっかけの一つとなったのは、GHQの勧告だったのです。
昭和21年(1946年)秋、連合国軍最高司令官総司令部(GHQ/SCAP)民間情報教育局の美術顧問、チャールズ・F・ギャラガー(Charles F. Gallagher)が、長野県内の文化財保存状況を調査するために訪れ、松本城を視察しました。
当時の松本城は、明治の大修理からすでに30年以上が経過し、再び傷みが進んでいました。
その状態を確認したギャラガーは、本格的な解体修理が必要と判断し、文部省に対して早期着工を勧告したのです。
この勧告も後押しとなり、専門家による調査や地元の保存運動などを経て、昭和25年(1950年)、国の直轄事業として松本城の全面的な解体修理が始まりました。
これが、昭和30年(1955年)まで続く「昭和の大修理」です。
工事では、建物をいったん解体して詳細に調査し、傷んだ部材の修理や構造の補強を行うとともに、明治の大修理で変更された部分を、残された痕跡などをもとに復元しました。
現在の松本城の姿は、この大修理によって整えられたものなのです。

この工事は、文部省直轄による国宝保存事業の第1号となりました。戦後の文化財保存の歴史においても、たいへん重要な事業だったのです。
ちなみに、松本城の工事中に建物全体を覆っていた仮設の屋根「素屋根(すやね)」に使われた丸太は、その後、姫路城の修理工事でも再利用されたそうです。
松本城での経験は、その後の城郭保存事業にも受け継がれていったわけです。
さて、ここで話を映画に戻しましょう。
映画の中ではキングギドラによって破壊されてしまった松本城ですが、その後、GHQの勧告をきっかけに再建され、現在の美しい姿を取り戻した……。
もちろん、これは映画の世界と史実を重ね合わせた想像のお話です。
しかし、映画の舞台が昭和24年で、実際に松本城の大修理が始まったのが翌昭和25年というのも、なんとも絶妙なタイミングです。
フィクションと歴史が、こんなところで思いがけずつながるのも、松本を舞台にした映画ならではの楽しみだと思います。
山崎監督、もし次回作で松本のその後を描かれることがありましたら、ぜひ、キングギドラ被災からの松本復興とともに、松本城がよみがえっていく様子も、ちらっとで結構ですので登場させていただければ嬉しいです!