ウォルター・ウェストン 古写真 松本城 歴史 風景

明治24年8月2日 ウェストン 松本城天守登城!

今回は、ウォルター・ウェストンが松本城天守に登ったお話です。

上高地の観光名所のひとつに「ウェストン碑」があります。


毎年6月に、ここで「上高地ウェストン祭」が催されています。

トップページでも用いているこの写真は、そのウェストンが、明治29年(1896年)イギリスで刊行した『Mountaineering and Exploration in the Japanese Alps』(日本アルプスの登山と探検)の96ページに掲載されているものです。

ココです!

松本城天守の姿が海外に広く紹介されたのは、これが初めてだったと思われます。
その意味では重要な写真です。

オリジナルの書籍は、状態の良いものですと普通に10万円以上しますので、とても手の届くものではありません。
しかし、ありがたいことに「インターネットアーカイブ」にて、全ページを気軽に閲覧することができます。
さすが日本山岳史上の名著です!
リンク参照 → https://archive.org/stream/mountaineeringex00westrich#mode/2up


昭和50年(1975年)には、社団法人日本山岳会が復刻版を発行しています。
こちらは、古書店にて4千円で購入したものです。

実は、この本を最初に手にしたとき、「不良品か?!」と思いました。
ご覧のようにページごとにカットされていなかったからです。


しかしネットで調べて、理由がわかりました。
昔は洋書の多くが、このような「アンカット本」だったのです。

オリジナルにとても忠実な復刻版だった訳ですね。
このように、ペーパーナイフで切り開きながら、じっくりと読み進めていきます。

さて、本題です。
「松本城」に関する記述は18ページ下方に載っています。

該当箇所を抜き出しますと...
「Near the northern entrance to the town the pagoda-like tower of the ancient fortress rises from the wide expanse of rice-fields and mulberry orchards,like a castle on a mammoth chess-board.The white plaster of its walls is rapidly peeling off,but even in its decay the old keep is stately,and its topmost storey affords a grand near view of the tall peaks that rise abruptly beyond the western out-skirts of the plain.」
辞書を片手に、とりあえず直訳です!
「町への北の入口の近くで、古代の要塞のパゴダのような塔が、巨大なチェス盤の上の城のように、田んぼと桑畑の広い拡がりから建ちあがっています。壁の白い漆喰は急速に剥離しているけれども、その荒廃においてさえ古い天守は荘厳で、その最上階は、平原の西の郊外を越えて、険しくそびえる高い山頂の雄大な近景をもたらします。」

本当はこれを自力でカッコよく意訳したかったところですが、そんな文才はないので平成9年(1997年)の岩波文庫版における青木枝朗さんの翻訳を引用させていただきます。
「町の北はずれに古い城があって、パゴダのような塔がひろびろとした水田と桑畑の中に聳(そび)えている。それは巨大なチェスボードの上に置かれた城の駒(キャッスル)のように見えた。城壁の白壁はかなり剥げているが、古い天守閣は荒廃しながらもなお威容を保っていて、最上階に立つと、平野の西に聳える雄大な山々がすぐ目の前に迫ってきた。」

ここで、もうひとつご注目いただきたいのが赤枠の次の行「Monday,August 3rd,at 9A.M.,...」の日時です。
「8月3日月曜日、午前9時...」、ウェストンは松本を出発して日本アルプスに向かいます。
「日本アルプスの登山と探検」は紀行文・旅行記であり、注釈がない限り時系列で記述されています。
ウェストンはキリスト教の宣教師であり、前日の2日、日曜日は「安息日」だった筈。
登山に備え、松本の街で物資の調達や休息もしつつ、目についた天守を「観光」したのではないでしょうか。
「登山だって観光じゃないか」と一瞬思いますが、それはここ数十年のこと。
当時は限りなく「修行」に近い位置づけだったと思われます。
これらのことからウェストンが松本城天守に登ったのは、明治24年(1891年)8月2日(日)である可能性が極めて高いのです。

さて、ウェストンが松本で見た光景は、いったいどのようなものだったのでしょう。
チェスボードの上に城型のコマ(チェス用語では「ルーク」)を乗せて、水田の前で撮影してみました。

次の絵はがきは明治40年頃に城山から撮影されたものですが、拡大してみると中央に松本城が写っています。
何となくイメージが湧きますかね。

ウェストンが天守最上階から見たであろう光景は、次の2写真なら時代的にほぼ「ドンピシャ」です。
(季節は冬ですが)

「平野の西に聳える雄大な山々がすぐ目の前に迫って」くる光景は、昔も今も変わりませんね!

ウェストンと松本の関わりについては、まだまだたくさんのことをご紹介してまいります!

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