今回は「旧松本市役所」をご紹介します。
写真は大正2年(1913年)11月23日の落成式を記念した絵はがきから。
左上に写る人物は、初代松本市長小里頼永(おりよりなが)です。
松本の市制施行は明治40年(1907年)5月1日ですが、この庁舎完成までは明治22年(1889年)の町制施行時からの建物を使用していました。
しかしその建物は、元々病院を改築したもので機能性に劣り、狭く、また老朽化もすすんでいたため、全面改築を余儀なくされたのです。
松本の市制施行は、明治27年(1894年)7月の初出願から39年(1906年)12月の許可指令まで、実に12年半を要しました。
この原因として、信州の「南北問題」も影を落としているのですが、詳細はまたいずれ。(「宿題」がどんどん増えています...)
旧市役所は、昭和34年(1959年)現在の丸の内に新築・移転するまで使用されていました。
今この場所に建つのは、平成12年(2000年)4月供用開始の「松本市営住宅 上土団地」です。
旧市役所の移転後、市営住宅の建設までは、ここに生命保険会社のビルがありました。
歴史的景観のこのような「再生」のあり方は、コスト面や往時の再現性など、賛否の分かれるところだと思います。
しかしこうして見比べると、実際の「高さ」はかなり異なる(旧市役所が2階建、市営住宅は6階建)ものの、相応に往時を連想することができます。
因みに、市営住宅の東隣りは今は駐車場になっていますが、私が子供の頃は地元スーパーマーケットの先駆け「ササイ本店」でした。
この場所について明治時代まで遡ると、ウォルター・ウェストンが松本の定宿としていた「信濃屋旅館」(主人・笹井元治)が在ったようです。
撮影場所は赤マーカー付近で、北北東方向を望んでいます。
旧市役所の建物内部(「会議室」「事務室」)の絵はがきもあります。
昭和8年(1933年)発行の松本市史・下巻には、既に「今日にては甚しく狭隘を告ぐるに至れり」との記述があります。
市勢の発展もあってか、新築後20年ほどの経過で、すでに狭苦しくなってしまっていたようです。
さて、令和7年(2025年)にお目見え予定の新市庁舎はどのような姿になるのでしょう?
注目ですね!